気仙川・矢作川を訪ねて
遠野を旅した後、赤羽根トンネルを抜けて住田町に入る。
住田町、陸前高田市を流れる気仙川は鍾乳洞である滝観洞の一帯の山々を上流源とする清流だ。25年ほど前に初めてこの川と出会ったときは、「川って本当はこんなにきれいなものなんだ」と感動した。清流のまま海まで流れている川は、それまで見たことが無かったからだ。
いつもは滝観洞までさかのぼって行ったものだが、上流部は護岸工事がさかんで、川がコンクリート製の真直ぐな排水溝になり、さらに遠野と釜石を結ぶ新仙人峠道路ができてからというもの山里の風情が少なくなり、私にとって見るべきものが無くなってしまった。
有住中学校付近から気仙川沿いの国道340号線をゆっくりと下ってゆく。
(どの写真もクリックすると大きくなります)
しばらく行くと川に木製の一見頼りなさそうな橋がかかっている。松日橋と呼ばれる流れ橋だ。対岸の農地や民家とを結ぶ大事な橋だ。
流れ橋とは、普段はしっかりしているが、増水し水位が橋板に達したときには水に逆らわずに分解し、材料の材木にはそれぞれロープが結ばれていて下流には流されずに再びそれを使って橋がつくれるようになっている。
昔の人の知恵はすごいものだと感心しつつ橋を渡ってみる。ゆっさゆっさと上下しながらの渡り心地は、私の家の近所の川にあった小さい木の橋を思い出し懐かしい。
それにしてもこの川の透き通った水にはいつも驚かされる。川底の石のひとつひとつをしっかり見ることができる。逃げ惑う魚の姿もくっきりだ。
春、夏はヤマメやアユをねらう釣り人の姿がたくさん見られるのだが。もう禁漁期に入ったのでしょうか川は静かに流れていました。
昼食は陸前高田でラーメンを食べ高田松原の砂浜で休憩。カキ養殖のいかだを遠く眺めつつ、今度は冬に来てきれいな川が注ぐ広田湾のカキを食べてみようと誓った(誓うほどのことでもないか)。
国道343号線を一関方面へ。ここではやはり清流矢作川(やはぎがわ)沿いの景色を楽しむ。
気仙川よりはずっと水量は少ないものの、それ以上に水は美しいと言っても良いかもしれない。川の直ぐそばに民家があり、人と川との親密さは大きいようだ。
深いところの水の色は青みがかっていて、たくさんの魚が群れている。
どこを撮っても絵になる感じだ。
散歩帰りのワンコの汚れを洗い流してくれるのもこの川だ。川に入る前は、さかんに私にほえていたワンコだが(あやしいおっさんにしか見えないだろうな)、きれいに洗ってもらったら機嫌が良くなり私に近づいてきて頭をなでさせてくれた。
皆をやさしくさせてくれそうな川だものな~。
夏にこの川で泳いだらどんなに気持ちが良いのだろう。魚をつかまえたり、疲れたら川で冷やしていたスイカを食べたりと。子どもたちの歓声が聞こえてきそうだ。
この川の最上流部には国道343号線のループ橋がある。狭い谷間に安全な道路を造るためには最良の方法なのだろう。
確かに私が初めて陸前高田に来た頃は、狭い山道を大型トラックや観光バスが何台も通り怖い思いもしている。ガードレールのすぐ横は100メートル以上もありそうな谷底というところも何ヶ所も有った。
ループ橋の下には今も民家が点在し人々が生活している。その姿にこの橋はいつまでもマッチしないんだろうな。
「昔はどんだけ雨が降っても沢の水が濁ることは無かったんだが、今では雨やんでしばらくしないときれいになんねえ」。とここに住む老人が語っていた。
いつまで在るかわからないこの川美しさをせめて今のうちにたくさん見て写真に留めておきたいと、私の旅は続くのであった。
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